滋賀医科大学 内科学講座 神経内科は、脳神経を診る内科として神経内科学に関する学生教育および神経内科若手医師の育成、よりすぐれた診療と研究を発展させていくことを目指します

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研究について

研究

滋賀医大の研究環境における最大の利点は、臨床、基礎、研究センターの間の垣根が低く、各々の領域で世界のトップランナーの研究者のもと、共同研究体制を築きやすいことが挙げられます。また、実験支援センター、動物生命科学研究センターなどの実験支援環境が充実し、最新機器を用いた研究が行なえます。

滋賀医大神経内科は糖尿病内科を中心とする第三内科の診療グループという利点を活かして、糖尿病性ニューロパチーの病態解明、新規治療法開発について、先駆的かつ独創的な研究成果を上げてきました。さらに末梢神経障害性疼痛の病態の遺伝子改変マウスを用いた分子生物学的解明(1)、ニューロンの部位特異的なドラッグデリバリーシステムを用いた遺伝子治療法の開発など、先進医療研究の最先端研究分野でも優れた業績を上げています。また、致死性神経変性疾患である筋萎縮性側索硬化症(ALS)では新たなメカニズムを解明し、原因タンパク質に対するワクチン・抗体療法の有効性を初めて示しました(2-4)。ALSモデル動物に対する骨髄幹細胞移植を成功させ(5)、現在根治療法の開発を目指し研究を進めています。

滋賀医科大学神経内科は臨床研究も活発です。神経疾患、難病患者のきめ細やかな診療と、鋭い洞察によって新たな症候やメカニズムを発見し、多くの国際一流誌に採択されています(6,7)。

今後専門領域の拡充を進めていきますので、柔軟な着想による新たな研究分野への挑戦や、立ち上げのための国内留学も積極的に支援します。

1. 筋萎縮性側索硬化症の分子病態の解明と新規分子標的治療法の開発研究(漆谷)

ALSを取り巻く研究上の進展は著しく、毎年教科書に加わるような発見が続いています。現在ALSは多くの因子を原因とする多因子疾患であり、その究極に異常蛋白質病とRNA病としての2大側面を有すると、理解されています。我々は以前より前者に着目し家族性・孤発性ALSの原因蛋白質による運動ニューロン変性の機序を研究してきました。これまでに家族性ALSの原因と一つである変異SOD1蛋白質がシナプス分泌蛋白質とともに細胞外に分泌されミクログリアの活性化や運動ニューロン死をきたすことを突き止め、ワクチン・抗体療法の有用性を報告しました(2-4)、現在新規治療抗体の開発を進めています。さらに孤発性ALSの原因蛋白質TDP-43が毒性を獲得する構造変化を同定し(8)、分解経路を発見しオリゴデンドロサイトにおける封入体形成の仕組みを明らかにしました(9) 。新たなALSモデルの作製と細胞内抗体や低分子スクリーニングによる新規の治療・診断法を細胞移植や遺伝子治療と組み合わせて進めています。さらに現在決定的に欠落しているALSの適切なモデル動物を作製し前臨床研究を効果的に進めます。

 

1.	筋萎縮性側索硬化症の分子病態の解明と新規分子標的治療法の開発研究(漆谷)

2. 難治性末梢神経障害の病態解明、新規治療法の開発研究(山川、小川)

糖尿病性神経障害(DN)は難治性であり、その発症機序は多岐にわたります。TNFαは病態への関与が想定されていましたが決定的なエビデンスはありませんでした。我々は、糖尿病を発症したTNFαノックアウト(KO)マウスを詳細に解析したところ、末梢神経障害の証拠である神経伝導速度の低下所見をみとめず、後根神経節の免疫染色ではリン酸化NF-κBやcleaved caspase-3の染色性も野生型に比し低下することを示し、TNFαがDNに重要であることを遺伝学的に初めて証明しました。さらに糖尿病を発症した野生型マウスにTNFα阻害薬を投与したところ、神経伝導速度の改善、後根神経節でのリン酸化NF-κBやcleaved caspase-3の染色性の抑制を認め、TNFαmRNAの発現も抑制することを示し、TNFα阻害薬がDNに対して有効な治療になりうることを突き止めました(1)。

2.	難治性末梢神経障害の病態解明、新規治療法の開発研究(山川、小川)

3. 筋萎縮性側索硬化症への再生治療をめざした骨髄幹細胞移植研究(寺島)

骨髄移植によるALSへの細胞治療は、以前より世界的に試みられていますが、著明な効果に乏しく、更なる改良や工夫が必要とされてきました。以前より骨髄由来細胞による細胞移植に関心を持っていた我々は、この骨髄細胞に神経保護作用を誘導することに成功し、ALSモデル動物で治療効果を示すことができました(5)。それは、Stem cell factor (SCF)と呼ばれる分化誘導因子下で骨髄細胞を培養し、ALSモデルマウスに移植するといった方法で、移植された細胞は、病変部位でミクログリア様の細胞へと分化し、GLT1という神経保護物質を発現することによってその治療効果を示していると考えられました。また、この細胞は、病態が進行するにつれ、多数脊髄内に集まってくることから、病態の進行に合わせて効果も上がることが予測されました(5)。現在、さらなる理想的な治療方法の開発を目指して、骨髄幹細胞を目的の細胞(治療効果を有する細胞)にのみ誘導する方法を開発検討しており、臨床応用を見据えた自己骨髄幹細胞による理想的な細胞移植治療法の開発を進めています。

 


骨髄移植によるALSへの細胞治療は、以前より世界的に試みられていますが、著明な効果に乏しく、更なる改良や工夫が必要とされてきました。以前より骨髄由来細胞による細胞移植に関心を持っていた我々は、この骨髄細胞に神経保護作用を誘導することに成功し、ALSモデル動物で治療効果を示すことができました(5)。それは、Stem cell factor (SCF)と呼ばれる分化誘導因子下で骨髄細胞を培養し、ALSモデルマウスに移植するといった方法で、移植された細胞は、病変部位でミクログリア様の細胞へと分化し、GLT1という神経保護物質を発現することによってその治療効果を示していると考えられました。また、この細胞は、病態が進行するにつれ、多数脊髄内に集まってくることから、病態の進行に合わせて効果も上がることが予測されました(5)。現在、さらなる理想的な治療方法の開発を目指して、骨髄幹細胞を目的の細胞(治療効果を有する細胞)にのみ誘導する方法を開発検討しており、臨床応用を見据えた自己骨髄幹細胞による理想的な細胞移植治療法の開発を進めています。


 

4. 今後展開予定分野:脳血管障害、アルツハイマー病基礎研究。

関連講座

神経難病研究センター

 

臨床研究ユニット神経内科学部門;教授 漆谷 真 (神経内科兼任)

 

 

主にALSの分子標的治療法開発、前臨床試験のための新規ALSモデルの作成をめざす。
  橋渡し研究ユニット;教授・センター長 遠山育夫
   

アルツハイマー病の先制医療に向けた早期診断法の開発(MRIプローブ、鼻粘膜診断など)で世界をリードしている。

生化学・分子生物学講座
  再生修復医学部門;准教授 寺島智也

 

 

糖尿病性ニューロパチー、ALSの骨髄系細胞移植治療開発研究で優れた実績を有する。

 

参考文献


  1. Yamakawa I, Kojima H, Tershima T, Katagi M, Oi J, Urabe H, Sanada M, Kawai H, Chan L, Yasuda H, Maegawa H, Kimura H. Inactivation of TNF- α amerliorates diabetic neuropathy in mice. Am J Physiol Endocrinol Metab 301(5):E844-852, 2011.
  2. Takeuchi S, Fujiwara N, Ido A, Ono M, Takeuchi Y, Tateno M, Suzuki K, Takahashi R, Tooyama I, Taniguchi N, Julien JP, Urushitani M. Induction of protective immunity by vaccination with wild-type apo SOD1 in the mutant SOD1 transgenic mice. J Neuropathol Exp Neurol. 2010, 69; 1044-1056 
  3. Urushitani M, Abou Ezzi S, Julien JP. Therapeutic effects of immunization with mutant superoxide dismutase in mice models of ALS. Proc Natl Acad Sci U S A 2007, 104, 2495-2500
  4. Urushitani M, Sik A, Sakurai T, Nukina N, Takahashi R, Julien JP. Chromogranin-mediated secretion of mutant superoxide dismutase proteins linked to amyotrophic lateral sclerosis. Nat Neurosci 2006, 9:108-118
  5. Terashima T, Kojima H, Urabe H, Yamakawa I, Ogawa N, Kawai H, Chan L, Maegawa H. Stem Cell Factor-Activated Bone Marrow Ameliorates Amyotrophic Lateral Sclerosis by Promoting Protective Microglial Migration. J. Neurosci. Res. 92: 856, 2014.
  6. Maeda K, Kawai H, Sanada M, Terashima T, Ogawa N, Idehara R, Makiishi T, Yasuda H, Sato SI, Hoshi KI, Yahikozawa H, Nishi K, Itoh Y, Ogasawara K, Tomita K, Indo HP, Majima HJ. Clinical Phenotype and Segregation of Mitochondrial 3243A>G Mutation in 2 Pairs of Monozygotic Twins. JAMA Neurol. 2016 Jun 20. doi: 10.1001/jamaneurol.2016.0886.
  7. Kawai H, Nakajima A. Images in clinical medicine. Red puffy ears. N Engl J Med. 2010 Mar 11;362(10):928.
  8. Shodai A, Morimura T, Ido A, Uchida T, Ayaki T, Takahashi R, Kitazawa S, Suzuki S, Shirouzu M, Kigawa T, Muto Y, Yokoyama S, Takahashi R, Kitahara R, Ito H, Fujiwara N, Urushitani M. Aberrant assembly of RNA-recognition motif 1 links to pathogenic conversion of TAR DNA-binding protein-43 (TDP-43). J Biol Chem 2013, 288, 21, 14886-14905.
  9. Uchida T, Tamaki Y, Ayaki T, Shodai A, Kaji S, Morimura T, Banno Y, Nishitsuji K, Sakashita N, Maki T,. Yamashita H, Ito H, Takahashi R, Urushitani M. CUL2-mediated clearance of misfolded TDP-43 is paradoxically affected by VHL in oligodendrocytes in ALS. Sci Rep, 2016, 6: 19118