その他の末梢神経の病気(末梢神経障害)

主要な病気の解説

その他の末梢神経の病気(末梢神経障害)

末梢神経には運動を筋肉伝える運動神経(運動ニューロンとも言います)、皮膚などからの感覚を脳に伝える感覚神経、心臓や消化管の動きを調節する自律神経があります。ここでは末梢神経が主に障害される病気について説明します。

a. 多巣性運動ニューロパチー(MMN) 

からだの免疫の異常で、脊髄から筋肉に向かって運動の司令を伝える「運動神経(運動ニューロン)」のみが障害を受け、筋力が低下する病気で、指定難病です(慢性炎症性脱髄性多発神経炎/多巣性運動ニューロパチー(指定難病14) – 難病情報センター)。数週間から数カ月かけて進行することが多く、通常左右非対称です。若年から中高年まで、あらゆる年齢で掛かる可能性があります。痛みやしびれなどの感覚症状や、排尿や立ち眩みなどの自律神経症状はなく、筋力低下のみが出現します。治療可能な病気のため、ALSが疑われる患者を診断する際には、常にこの病気の可能性がないかを詳細に検討します。検査は神経伝導検査という検査が大切です。また、血液検査で「ガングリオシド抗体(GM1)」という自己抗体が出現することがあります。治療はヒト献血から精製した免疫グロブリンという抗体薬を数日間点滴投与することで、症状が改善します。

b. 慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)

多巣性運動ニューロパチー(MMN)とよく似た症状が出ますが、違いは感覚神経も障害されることが多いことです。CIDPも自己免疫疾患と考えられています。つまり、からだの免疫活動が以上になり、末梢神経の髄鞘が攻撃され、その結果脱髄(多発性硬化症の説明をご覧下さい)が起こります。難病に指定されています(慢性炎症性脱髄性多発神経炎/多巣性運動ニューロパチー(指定難病14) – 難病情報センター)。診断は神経伝導検査と脳脊髄液の検査を行います。MMN同様に、免疫グロブリンが極めて有効ですが、進行すると効果が弱くなります。早期診断、治療開始が非常に重要な病気です。また、CIDPは一見そう見えて、実は治療法が異なる他の病気である可能性があります。例えば、家族性アミロイドポリニューロパチー、POEMS症候群、悪性リンパ腫など、根治的な有効な治療が存在する病気と区別が難しい場合があるので、神経筋疾患を得意とする脳神経内科専門医を受診して下さい。

c. ギラン・バレー症候群 

下痢やかぜが一旦治った後、10日ほどで手や足先の力が弱くなり、しびれ感が出現し、それらが急速に悪化する病気です。通常筋力低下やしびれ感の場所は足や手の先から体幹(胴体)に向かって広がってゆきます。言葉の喋りづらさや、食事や唾の飲み込みにくさ、あるいは息苦しさを感じる場合は、命に関わる呼吸麻痺をきたすことがあります。至急、救急病院を受診して下さい。診断は脳神経内科医が、神経伝導検査(多巣性運動ニューロパチー;MMNで説明しました)や腰椎穿刺で脳脊髄液の検査を行い、診断します。速やかな治療が必要であり、入院の上、免疫グロブリン大量療法や血漿交換治療を行います。治療を開始してもしばらくは症状が進行することがあり、呼吸麻痺に至った場合、一時的に気管内挿管や気管切開を行い、人工呼吸器を使う場合もありますが、治療によって症状が改善すると通常、それらは不要になります。

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