パーキンソン病

主要な病気の解説

パーキンソン病

どんな病気?

【1】筋力は保たれているにもかかわらず、動作が鈍くなり、歩行の際に足が前に出にくくなり、時に転倒することや、また着替えに時間がかかる、歩行時や休んでいるときに手がふるえる場合は、パーキンソン病を疑う必要があります。脳の中の中脳といわれる場所には、身体を動かす際に動作のアクセルとブレーキを調節するために大切なドパミンという物質を作る神経細胞があります。パーキンソン病ではこの神経細胞が死滅するために、脳からドパミンが減少するためにおこる病気です。原因は中脳の神経細胞にαシヌクレインというタンパク質が異常に蓄積することが関係する、と考えられています。国が定める指定難病ですが(パーキンソン病(指定難病6) – 難病情報センター)、10万人あたり100~150人の患者がいますが、65歳を超えると患者数は10倍になり、「年を取ればだれでもかかりうる病気」といえます。

【2】症状としては、起立や歩行時に、歩幅が小さくなり、方向を変える際に転びそうになる、さらに背筋が前に曲がることも特徴です。そして「歩行時」や「手を机や膝に上においてじっとしている際」に手がふるえる場合もあります。これを「安静時振戦」といいパーキンソン病の特徴です。安静時振戦はコップや車のハンドルを握ったり、お箸を持つとむしろ軽くなります。

【3】パーキンソン病の症状とよく似ているのに、原因が違う病気があり、これらをパーキンソン症候群といいます。お薬の副作用として生じる薬剤性パーキンソン症候群は、精神科のお薬が原因であることが多いですが、それ以外にも血圧のお薬やてんかんのお薬でも起こることがありますので専門医の判断を受けてください。パーキンソン病同様、脳の病気、つまり変性型パーキンソン症候群として大切な病気に、進行性核上性麻痺(PSPと略します)と多系統萎縮症(MSAと略します)があります。また、歩行の様子がパーキンソン病と似ている病気として正常圧水頭症という病気がありますが、これらは別の項で説明します。

【4】このような運動に関わる症状に加え、パーキンソン病では「非運動症状」と呼ばれるいくつかの特徴的な症状があります。最も特徴的な症状は「REM睡眠関連行動異常(RBD)」といわれる、睡眠時の「大きな激しい寝言と寝相」です。これは睡眠後しばらくして、夢を見る際に頭と体がそれに対して現実のものの様に反応して、大声を出したり、身体をバタバタさせて反応するもので、同居者がビックリされることが多いです。非典型的な「痛み」も特徴的です。通常の痛み止めは無効なことも多く、パーキンソン病のお薬の調整がむしろ有効なこともありますが、治療に難渋することもあります。自律神経症状はよく見られる非運動症状で、便秘や頻尿は高率に認められます。進行すると「いないはずの人が見える」「シミや模様が人に見える」といった「幻視」はパーキンソン病の類縁疾患であるレビー小体型認知症でも見られます。

【5】診断のための検査として、脳MRI、ドパミンを作る細胞が存在するかどうかを調べる検査(DATスキャン)、心臓の自律神経の機能を調べる検査(MIBG心筋シンチ)を行うことが多いです。これらの検査はパーキンソン病とパーキンソン症候群の区別をするためにも有効です。

治療は?

【1】パーキンソン病は脳のドパミンが不足する病気のため、その補充を行えば症状は改善します。ただし、ドパミンそのものを飲んだり、点滴しても脳には届かないため、ドパミンの材料となる「レボドパ」というお薬を内服します。その他にはドパミンの作用を強め、効き目の長い「ドパミン受容体アゴニスト」、や、脳や末梢血でドパミンやレボドパの分解をおさえるお薬も使われます。どの薬をどの時期に飲むかについては、「ガイドライン」という指針で示されていますが、専門医の裁量で患者さんごとに最適な治療法が選択されます。

【2】パーキンソン病では発症後しばらくの期間、お薬が非常に良く効きますが、3~5年たつと、お薬の効きが悪くなり、効く時間も短くなる場合があります。これをオフといい、脳のドパミン産生細胞の減少が進行するために起こると考えられています。この時期の治療は、「血液中のレボドパの量を出来るだけ一定にし続ける」ということが目標となります。具体的には、パーキンソン病の基本薬であるレボドパの服薬回数を増やしたり、ドパミンやレボドパの分解をおさえるお薬、ドパミン受容体アゴニストを特に貼り薬として使うことで、オフの時間を減らすことを目指します。もう一つの注意すべき症状として「ジスキネジア」というからだが勝手にクネクネと動く症状も同じ時期に出現することがあります。多くはお薬を飲んで最も効き目が出てくる1時間前後で、体幹や手、さらに口で認めることが多いです。これは薬の血中濃度が最も高い時間帯です。患者さんがお困りでない場合はレボドパで動きやすくなることを優先させますが、動きがつらい場合はレボドパや他のパーキンソン病薬を減らす、あるいはジスキネジアを和らげるお薬を処方することがあります。

【3】 内服を調整してもオフが日常生活の多くを占める場合は、機械を使って血液中のレボドパの量を一定にする治療や、手術について患者さんと相談します。 

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