主要な病気の解説
筋萎縮性側索硬化症(ALS)
どんな病気?
◆全身の筋肉がやせて力が入らなくなる病気です。60歳以上で発病することが殆どですが、最近高齢発症の患者さんが増えています。原因は脳と脊髄にある運動ニューロンが消失することで、筋肉に運動の指令が伝わらなくなるために起こります。症状が進行するとものを噛んだり飲んだりすることや、呼吸が困難となることがあります。長らく原因不明でしたが、現在は遺伝子変異や病巣に病気を引き起こす異常なタンパク質の蓄積が判明し、詳細なメカニズムが判明してきました。患者の殆ど(90%)は遺伝しない孤発性ALSですが、約10%は遺伝子の突然変異(遺伝情報の書き換え)が原因で起こる家族性ALSです。国が定める指定難病の1つです(筋萎縮性側索硬化症(ALS)(指定難病2) – 難病情報センター)。
◆診断は専門医による問診と診察、さらに筋電図や神経伝導検査といった、筋肉と運動ニューロンの異常の有無を調べる検査を行います。脳や脊髄のMRI、そして超音波検査もよく行われます。脳MRIではALSに特徴的な所見を認めることがあり、一方脊椎のMRIは脊椎や椎間板の異常を調べるために行います。実際、ALSには頚椎症や腰部脊柱管狭窄症などの整形外科的な疾患が合併することが多く手術を受けることもありますが、多くの場合症状の原因ではありません。脳神経内科医による診察と筋電図検査で関連の有無について判断が可能です。孤発性ALSでは診断を確定できる血液検査は有りませんが、家族性ALSは血液の遺伝子検査で診断が付く場合があります。最近は一部の家族性ALSに非常に有効なお薬が使えるようになったため、家族歴のある患者だけでなく、発症年齢が若い(40歳以下)などでは遺伝子診断を進める機会も増えています。ただし、遺伝子診断は、その結果は本人のみならず、血のつながったご家族にも影響する場合があるため、遺伝専門医や脳神経内科専門医としっかり相談の上、決めることが重要です。
治療は?
◆ALSを完治させる、あるいは進行を止めるお薬はまだありません。しかし早期から始めることで、進行速度を遅くする効果が証明されたお薬の利用が可能です。しかし、治療法の全く異なる他の病気との区別が難しいこともあり、初期治療が遅れる場合もあります。我が国では現在3種類が利用可能で、診断を速やかに開始することが推奨されます。
◆進行を抑えるために、お薬同様に大切な治療として栄養療法と呼吸療法があります。ALS患者の殆どは食べているのに体重が減ります。そして体重減少の程度が大きい患者さんは、その後の進行が速いことが知られています。よって体重が減らないように、通常よりも高いカロリーの食事を摂取することが必要です。具体的な必要カロリーは、ALSの状態に応じて計算する必要があります。患者さん向けのホームページ(https://als-station.jp/calc_energy.html)で知ることが出来ます。ただし、病状や合併症によって栄養の取り方には配慮が必要ですので、主治医とよくご相談いただくことをお勧めします。次に呼吸について説明します。ALSでは呼吸に必要な筋肉が麻痺することで、一般的に発症後3年頃に呼吸困難に至ることがあります。呼吸困難はALSの生命を左右する重大な症状で、自力で生活するための呼吸ができない場合、機械のサポートを受ける「人工呼吸」が必要となる場合があります。この時期を遅くするために、呼吸に関わる筋肉を「休ませる」ために、軽度の呼吸苦が出たころから「マスクによる人工呼吸の時間を作る」ことが勧められています。マスクによる人工呼吸は、口や鼻にあてるのでいつでもつけ外しが出来ます。
◆リハビリテーションについては注意が必要です。手足を鍛えるつもりで激しい筋肉トレーニングをすることは、かえって病気を進行させる可能性があると言われています。よって疲れない程度に、かつ筋力が低下した筋肉を上手に休ませながら運動することになりますが、これには専門的なリハビリテーションの知識と経験が必要です。
◆一部の遺伝性ALSは画期的な核酸治療薬が登場していますが、SOD1遺伝子に突然変異を診断された患者さんのみ利用が可能です。一部の患者では非常に高い治療効果を認めますが、毎月の腰椎穿刺が必要です。
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脳神経内科【外来】
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