滋賀医科大学 内科学講座 脳神経内科ホームページ トップに戻る

臨床について

臨床活動

滋賀医大附属病院脳神経内科は日本神経学会専門医10名(関連講座を含めると13名)と滋賀県随一の専門医数を誇り、その他脳卒中専門医2名、認知症専門医2名を擁しています。脳卒中を始めとする急性期疾患から、認知症などのコモンディジーズ、さらに筋萎縮性側索硬化症(ALS)や脊髄小脳変性症などのいわゆる難病と言われる神経変性疾患まであらゆる疾患に対し、高度で最新のエビデンスにも説いた診断と治療を提供しています。

全てのスタッフはハイレベルのオールラウンドプレイヤーですが、脳卒中、神経難病、神経生理診断など、各々サブスペシャルティを持ち、あらゆる神経疾患に対応します。

大学病院として患者さんのためにできることは何かを常に考え、脳卒中は脳神経外科との共同で血管内治療を積極的に進め、神経難病患者には医師主導治験や新薬の企業治験を取り入れることで治療の機会を少しでも広げる努力を行っています。リハビリテーション部との共同で独自の神経リハビリテーションプログラムの導入や、意思伝達や手指運動などのリハビリテーション支援装置を積極的に導入し、着実な成果を上げています。

滋賀医大は滋賀県難病医療連携協議会事務局が設置されており、難病医療政策について滋賀県と綿密な意見交換や提言をし、県内の難病患者の医療、在宅環境が向上すべく、医療従事者研修会や難病ネットワーク研修など様々な公的活動も進めています。

2018年度入院症例内訳

<滋賀医大脳神経内科の特徴的治療の紹介>

1) 脳梗塞の超急性期ハイブリッド療法

脳梗塞は発症後4時間半以内であればt-PA(アルテプラーゼ)による血栓溶解療法が最初の治療となりますが、t-PAの無効例や4時間半以降の症例においても8時間以内であれば血管内治療による血栓回収が有効等言われています。

2015年に発表されたESPCAPE試験では、標準内科治療群と血管内治療を加えた治療群について、脳梗塞発症後90日後の機能予後を比較したところ、modified Rankinスケール(機能予後の指標)にて血管内治療群で有意に改善しました(Goyal M. et al.: N Engl J Med. 372: 1019, 2015)。

我々は、超急性期脳卒中患者に対しては脳神経外科と連携し、脳神経内科でt-PAを行うと同時に、あるいは行った後の反応性に応じて積極的にカテーテルによる血管内治療を行っています。2015年の急性期脳梗塞患者においてt-PA治療は20%、ハイブリッド治療は8%と、全国の平均実施率を大きく上回っています。入院後の神経リハビリテーションも充実しており、退院時に大きな機能改善が得られています。

滋賀医大脳神経内科は救急・救命治療学講座、脳視神経外科講座と共同で、救急外来へのホットラインが入った段階で、脳MRI(あるいはCT)と必要な血液検査の準備をし、病因到着後は速やかに神経専門医による診察と血栓溶解治療の適応判断と実施に向けてのフローを作成しています。

脳卒中疑いホットライン(救急隊)

2) 神経筋疾患の高度診断と治療

滋賀医大脳神経内科は、従来糖尿病性末梢神経障害を中心とした神経疾患診療において全国をリードしてきました。特に糖尿病性の末梢神経障害性疼痛の治療においては豊富な経験を有します。

我々はさらに、筋電図、神経伝導検査、誘発電位などの電気生理学手検査を充実させるとともに、非侵襲的で高い網羅的診断の力を有する神経筋超音波検査を新たに導入し、電気生理やMRIのみで診断が困難な症例の診断に成功し、既存の疾患で新たな知見を得ております。放射線科との連携も蜜で、特種な神経根や末梢神経疾患の診断のための特種なMRIの撮像方法の導入にも力を入れて診断能力を向上させ、多くの診断困難例のご紹介を受けています。

末梢神経障害診療では、ステロイドや免疫グロブリン、血漿交換などの免疫治療、あるいは手術によって改善する疾患を見逃さないことが重要です。末梢神経障害の症状でお困りの方は一度受診されることをおすすめします。

3) 神経難病の最新エビデンスに基づく診断・治療と、病診連携ケア

脳神経内科が扱う主な疾患が神経変性疾患です。パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄小脳変性症、アルツハイマー病などの認知症などが含まれ、根治的な治療法がなく慢性進行性の経過をたどるため神経難病とも言われています。

以前は原因や病態の手がかりが全くなく、打つ手建てがありませんでしたが、最近原因となる遺伝子や、脳に蓄積する異常なタンパク質、それらによって起こる脳や脊髄での異常な仕組みが次々と明らかになりました。研究レベルでは有望な新規治療法が報告され、新薬も使用可能となっていますが残念ながら根底的な治療法の開発には至っていません。

我々はALSに対する抗体療法、再生療法の開発研究を進めるとともに、医師主導治験や新薬に関する企業治験には積極的に参加し、治療の機会を少しでも広げる努力をしています。また、ALSでは早期のカロリー補充や非侵襲的陽圧換気を用いた呼吸筋疲労の回避が、疾患の進行抑制効果を有するといった非薬物療法のエビデンスが蓄積しつつあり、早期の診断と疾患の理解に基づく薬剤と非薬物治療の早期開始が非常に重要です。

さらに医師、看護師のみならず、リハビリテーション、栄養管理スタッフ、そして神経難病専属の臨床心理士などからなる難病連携チームを作り、在宅治療を希望される難病患者の意思を如何に尊重するかを考えながら、患者とご家族に寄り添う病診連携ネットワーク作りに努めています。

4) 医師主導治験、企業治験の積極的実施

神経難病の多くは未だ有効性の高い治療が存在しない状況にあり、その多くは対症療法が中心となっています。その一方、疾患研究の進歩により疾患のメカニズムや治療標的の候補が発見され、医師主導治験や企業治験が行われるようになりました。治験はあくまで「治療効果があるかどうかを検証する」機会であり、有害事象についても未知の部分が多く、さらにプラセボと言って偽薬を服薬する可能性もあることをご理解して頂く必要がありますが、治療法のない難病患者さんにとっては大きな希望であることも事実であります。

滋賀医大脳神経内科は、大学病院として先進治療を推進するという責務を果たすため積極的に治験に参加しています。これまでALS、アルツハイマー病の治験を進めてきましたが、今後も神経難病を中心に治験を実施する予定です。
現在実施中医師主導治験、臨床研究についてはコチラをご覧ください。

【2018年度の医師主導治験実績】

I. 孤発性筋萎縮性側索硬化症に対するペランパネルの第 II 相臨床試験
II. 筋萎縮性側索硬化症に対するメチルコバラミン(E0302)の第 III 相臨床試験

 

5) 神経難病リハビリテーション

疾患発症のメカニズムや、研究レベルでは治療薬の開発研究が進んでいますが有効性は限られています。我々は神経難病患者さんに対する最も有効な治療の1つはリハビリテーションと考えています。特に筋力低下が軽度ないしは伴わない小脳失調、痙性対麻、パーキンソン病においては筋肉の再教育が有効な可能性があります。滋賀医大脳神経内科はリハビリテーション科・部内の専門医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士と協力して、独自の神経難病リハビリテーションプログラムを作成しました。まずは小脳性運動失調の集中リハビリテーションプログラムと筋萎縮性側索硬化症に対する手指運動困難に対する新たなリハビリテーションプログラムを開始しました。今後は痙性対麻痺、パーキンソン病など対象疾患を拡充する予定です。

脊髄小脳変性症患者に対する集中リハビリテーション図

6) 進行期パーキンソン病に対するレボドパ持続注入療法(デュオドパ)

パーキンソン病において、5年以上の長期の内服加療を受けていると突然薬の効果が切れ、動きが極端に悪くなる「オフ」という現象や、お薬が一番効いている時間帯に身体がくねくね動いてしまうジスキネジアという不随意運動などの運動合併症が生じる場合があります。適切な内服治療を試みた後、効果不十分であったり内服回数が増え煩雑になったりした場合、レボドパ十二指腸持続注入療法(デュオドパ療法)や深部脳刺激術(湖東記念病院)という治療が可能となりました。滋賀医大脳神経内科も本治療を導入し、良好な成績を挙げています。この治療は、入院後、最初に鼻から十二指腸までチューブを挿入し(NJチューブ)、数日間持続的にデュオドパ薬液を機械で送り込み、有効性が確認された場合に消化器内科医により胃瘻を作成していただき、胃瘻から十二指腸まで新たにチューブを入れ、薬液を入れたポンプをつないで携帯することで日常生活を送ることが可能です。

脊髄小脳変性症患者に対する集中リハビリテーション図

7) 痙性対麻痺の歩行障害に対する髄腔内バクロフェン注入療法

脊髄の障害や、脊髄小脳変性症の一部である家族性痙性対麻痺は、両側の下肢全体が突っ張ってしまい、歩行時に関節が思うように曲がらずうまく歩けないという症状が出ます。内服薬の効果は限られており、髄腔内(椎骨に囲まれる)にバクロフェンという薬液を持続的に注入することで、下肢の突っ張りと歩行困難が改善する場合があります。治療は椎体という背骨から脊髄が存在する髄腔内にチューブを挿入し、薬液を入れるポンプを皮下に設置します。試験投与を脳神経内科に入院して行い、実際の手術は脳外科で実施します。

8) ジストニアや痙性に対するボトックス療法

眼瞼や、顔がけいれんして目が開かなくなる眼瞼痙攣や、顔の半分が引っ張られるような半側顔面痙攣、さらに首や手の筋肉がねじれて真っ直ぐ向けない、字が書けないジストニアなど、自分の意志に反して筋肉が様々な動きをする病気を「不随意運動症」といいます。ボツリヌスはボツリヌス菌の毒素を無毒化して治療用に開発したもので、筋肉の無駄な動きを抑えるため、このような症状に良い適応です。

最近では脳梗塞後の筋肉の拘縮や痙縮にも用いられるようになりました。滋賀医大では、ボツリヌス専門外来を、毎週木曜日に設けて、集約的な診療ができるように体制を整えており、A型ボツリヌス毒素ボトックスを用いた治療(保険適用)を当科外来で実施しています。ボトックスは個別に発注する薬剤に指定されておりますので、初診受診時の投与はできませんのでご了解ください